この記事は、ZDNet Japanでの記事を転載しています。
企業でバーチャルリアリティ(VR)を活用しようという試みは多いが、その中でももっとも早く弾みがつきそうなものの1つは、チームコラボレーションへの応用だ。地理的に分散したチームのメンバーが、ヘッドセットを着けて仮想的なミーティングに参加するところを想像してもらえばいいだろう。
これは少々平凡に聞こえるし、当面はビデオ会議に取って代わることもないだろうが、VRは強力なコラボレーションを実現できる可能性がある。VRによる没入感の高い環境では、単にチームメンバーが仮想的に会えるだけでなく、リッチな3D表現と、可視化されたデータをリアルタイムで共有しながら作業を行うことができる。芸術家が仮想的な粘土を使って一緒に像を作ることもできれば、建築家が設計図から建物を生み出し、その場で協力しながら設計に関する意思決定を行うこともできるだろう。
しかしリアルな体験のためには、ある重要だが見過ごしやすい課題を解決する必要がある。それは、どのようにして「Pixar以前のコンピューターアニメーション」のようにならない、リアルなアバターを簡単に作れるようにするのかという課題だ。
4月に東京で開催された展示会「VR・AR・MR ワールド」では、ソフトバンクがVRを使ったコミュニケーション・ソーシャルプラットフォーム「EPIC LIVE PLAY」のデモを行っていた。もっとも魅力的だったのは、ユーザーのリアルなアバターを簡単に作れる機能だ。
同社はこのテクノロジーを開発するために、パーソナルAI(PAI)を専門とする企業ObEN、AR/VRソーシャルプラットフォーム企業のSalin、人間の動きをキャプチャーしデジタル化する技術を持っているwrnchという3社の新興企業とチームを組んだ。
ObENの最高経営責任者(CEO)Nikhil Jain氏は、「VRは、新たな仮想メディアの中で、空間を超えて人間の距離を縮めることを可能にする、驚くほど多用途に使えるプラットフォームだ」と話す。「映画の中では、この技術は世界中の同僚が同じ部屋にいるように感じられる仮想ミーティングを開いたり、何百マイルも離れている友人がバーチャルなクラブハウスで会ったりすることができるもの
として描かれている。EPIC LIVE PLAYでは、それを実現しようとしている」
3Dのアバターを作るには、まずモバイルデバイスで自撮り写真を撮り、短時間の音声の録音を行う。ObENの技術は、それぞれのユーザー自身の外見と声を持つアバターを作成できるように設計されている。そして、wrnchのモーションキャプチャー技術が、SalinのVR環境でアバターに命を吹き込む。ユーザーは、スマートフォンのカメラで動きをリアルタイムにキャプチャーされた同僚や友人、家族そっくりのアバターと会ったり、話したり、相互にやり取りしたりすることができる。
このプラットフォームは、Softbank Innovation Programの一環として作られたものだ。これはプロトタイプにすぎないが、3Dの分身をVR空間に送り込むのが普通になる世界が、それほど遠くない将来に実現する可能性は高い。VRが直面している大きな課題の1つは、現時点で提供されているVRは、主に個人的な体験だということだ。
VRが新たなソーシャルチャネルになれば、急速に普及することに期待できるかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したZDNet Japaの記事を転載しています。