コンプライアンスとコーポレートガバナンスの違い

コーポレートコミュニケーション部_コーポレートガバナンス

コーポレート・コミュニケーションを語る上で、昨今「コーポレートガバナンス」が話題になることの多いのですが、「コーポレートガバナンスとは何か」と問われると、確立した定義があるわけではなく、とらえどころのない概念でもあります。

コーポレートガバナンスとは、簡単に言えば「より良い企業経営が行われるための仕組み」と言えます。

それに対し、コンプライアンスとは、三省堂大辞林によれば「法令遵守。特に、企業活動において社会規範に反することなく、公正・公平に業務遂行すること」とありますので、その姿勢と言えます。

コンプライアンスについては、こちらの記事もご参照ください。

【2016年】「コンプライアンス違反」が一因になった倒産数は?

では、コーポレートガバナンスについて、もう少し詳しく述べてみましょう。

そもそも、なぜ企業にコーポレートガバナンスが必要となるのしょうか。
これは、伝統的に、企業の所有(株主)と支配(経営者)が分離すると、両者の利害が一致しなくなるという、いわゆる「エージェンシー問題」のためと説明されています。

エージェンシー問題とは

エージェンシー問題とは、プリンシパル(委託者)の委託を受けたエージェントが、委託者の利益のために行動しないことによる取引の失敗のことだ。これは、エージェントとプリンシパルの間に利害の対立があり、同時に両者の間に情報の非対称性(通常、エージェントの方が情報は豊富だ)があることによって起こる。

– 楽天証券
エージェンシー問題としての金融危機

株主自身が、株主の利益に合致した経営を行っているかについて、経営者の行動を逐一チェックできればいいのですが、それは現実的に不可能です。
そこで、「エージェンシー問題」の対応として、どのようにして経営者に株主の利益に合致した経営をさせるかが、コーポレートガバナンスの議論の出発点でした。

「失われた20年」といわれる日本経済の低迷の中、日本企業の低収益性の1つの要因が、コーポレートガバナンスの脆弱性にあるのではないかとの危機感が生まれ、それとともに、コーポレートガバナンスとは、より本質的には、「効率的な経営により企業のパフォーマンスを上げ企業価値を向上させるための仕組み」を指すとの理解が強まっていきました。

政府が2014年6月下旬に公表した「『日本再興戦略』改訂2014」において、我が国の成長戦略(第三の矢)における「日本の『稼ぐ力』の強化」の主要施策として、「企業統治(コーポレートガバナンス)の強化」が掲げられ、コーポレートガバナンスはあらためて、「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する」と定義されています。

これは正に、コーポレートガバナンスを、企業価値を向上させるための仕組みとして捉え、その強化を図ろうとするものです。

近時、このようなコーポレートガバナンスの捉え方を「攻めのガバナンス」と呼ぶことも多く、政府の旗振りの下、企業経営の長所を活かしつつ、資本市場との健全な対話の中で収益性を高めることができるかが、今後問われるといえます。

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